DPC RECRUIT
フォローアップ研修
Vol.08〜第八回DPC研修〜
仕事も人生も飛躍させよう

Vol.08 研修開催日:2025年5月24日
株式会社アマーイズ 代表取締役
マインドフルネススペシャリスト
日本スポーツ協会認定スポーツリーダー
山本 忍(やまもと しのぶ)
1967年東京生まれ、神奈川育ち。短大卒業後、ANAに新卒入社。空港スタッフとして4年間勤務。その後、沖縄県宮古島に移住。リゾートホテルの開業や社員研修、コンシェルジュデスクの立ち上げに従事。 帰京後はスポーツ業界に転向。名門女子サッカーチームやスポーツエージェントで 一流アスリートのマネージメントに携わり、「心技体の重要性」を学ぶ。これらの経験をふまえて独立起業。企業や個人の課題 を解決すべく、マインドフルネススペシャリストの資格を取得。心だけではなく、体やビジネススキル面からもビジネスパーソ ンを支える活動を積極的に行っている。 企業研修では、マインドフルネスに関するテーマを中心に、コミュニケーション、ハラスメントやメンタルヘルス、ホスピ タリティ等を主な強みとしたテーマで「自分を主語にし、常に今を生きることの大切さ」を伝える講演・研修が好評を博している。
心は“整える”のではなく“調える”
講演の冒頭で伝えたいのは、「心を整える」とはどういうことかという点です。一般的には「整理整頓」という言葉を思い浮かべますが、実は仏教の考え方では「調律」という意味合いの文字を使います。つまり、心は整然と片付けるものではなく、音楽の楽器のように、その時々に応じて少しずつ“チューニング”していくものなのです。
人の心は、生理的・脳科学的に「完全に整理整頓する」ことはできません。脳の仕組みとして、常に情報が流れ、感情や思考が動いているためです。だからこそ、自分の心を柔軟に調整する力が大切になります。ギターやピアノの音を微調整して正しい音を出すように、心も「こうあるべき」という固定された形ではなく、その時々で整えていくのです。
また、心は筋肉と同じように鍛えることができます。例えば、新人の皆さんが最初に薬の調合や配合に戸惑うように、最初は誰でもうまくいきません。しかし、繰り返し行動し、経験を重ねることで、次第に上手になっていくのです。これはスポーツでも芸術でも同じことで、心も同様に、行動を通じて鍛えることができます。
特に今日のような新入社員研修の場では、「何かを始めること」に対して不安や恐れを感じるかもしれません。でもそれは自然なことで、脳の仕組みによって新しいことに対して慎重になるようできているからです。大切なのは、まずやってみること。そして、それを続けることです。
人はある行動を21日間継続すると、習慣として定着しやすくなると言われています。1日数秒でも構いません。例えば、「笑顔で挨拶をする」「1日3回、ありがとうを伝える」など、小さな行動でいいのです。大切なのは、やってみようと思ったことを具体的に設定し、続けることです。
マインドフルネスとは
マインドフルネスとは、「今この瞬間に意識を向ける」心の状態のことを指し、近年、現代社会のストレスへの“応答”として注目されています。私たちは多忙な日常の中で、過去や未来に気を取られがちで、心が今に留まらず、不安や怒りに振り回されやすくなっています。特にコロナ禍以降、生活のリズムが崩れ、仕事とプライベートの境界が曖昧になったことで、ストレスが増大しました。これにより「ワークライフバランス」から「ワークアズライフ」へと価値観が変化し、心のセルフケアの重要性が高まっています。
現代は情報過多・マルチタスク社会であり、脳が休まる時間がありません。しかし、私たちの脳のスペックは数十万年前から変わっておらず、処理しきれない情報の洪水にさらされることで、怒りや不安が生じやすくなっています。怒りは一次感情である「不安・悲しみ・寂しさ」などが満たされない時に現れます。これは防衛本能でもあり、人間特有の「理性」によって抑え込まれることもあります。
マインドフルネスの実践は、こうした感情の根を理解し、自分の状態に気づき、受け入れることで心の安定につながります。怒りや不安を無理に否定せず、「今、自分はなぜこう感じているのか?」と内省することで、過去や未来に引きずられず、現在に立ち戻ることができます。この「今ここ」に意識を向けることが、自己理解と感情の安定、さらにはストレスの軽減に大きな効果をもたらすため、現代においてマインドフルネスは非常に注目されているのです。
1分間の体感と「今ここ」に集中する力
実際に1分間の瞑想を体験するワークを行いました。多くの人が「思ったより長く感じた」と驚きます。これは、私たちが普段どれだけ思考で未来や過去に意識を向け、現在に集中できていないかを示しています。「1分もある」と思うか「1分しかない」と思うかで、その後の行動や感情が変化するように、時間の感じ方は私たちの心の状態に大きく影響されています。こうした「今この瞬間に意識を向ける」習慣は、短い時間でも十分に効果があり、たとえば朝晩に1分間の呼吸瞑想を取り入れるだけでも、心の静けさや集中力を養うことができます。
日常に取り入れられるマインドフルネス
マインドフルネスは、日常のどんな場面にも応用できます。電車での「釣り革瞑想」では、つり革を持って目を閉じ、ただ呼吸に意識を向けるだけでマインドフルな状態になります。また、歩くときに足の裏の感覚や動きに注意を向ける「歩行瞑想」、スマートフォンを見ずに五感を使って食事を味わう「食べる瞑想」など、日常生活を使ったシンプルな実践法が紹介されました。さらに、相手の話を注意深く聞き、少し繰り返して返す「マインドフル・リスニング」も、相手との信頼関係を築く効果的な方法です。このように、「今この瞬間」に丁寧に向き合うことが、私たちの思考や行動に深い変化をもたらします。
人間の思考習慣とネガティブ傾向
人間は1日に6〜8万回もの思考をしていると言われており、そのうち約8割がネガティブな内容であることが分かっています。これは私たちの脳が、危険やリスクを回避するためにネガティブな情報に強く反応するという「防衛本能」に基づいています。特に日本人は、脳内のセロトニン分泌量が欧米人に比べて少なく、より不安やストレスを感じやすい傾向にあります。つまり、ネガティブに考えるのは私たちの「自然な状態」であり、ポジティブになるには意識的な思考の選択と訓練が必要です。これを理解することで、自分を責めすぎず、心の取り扱い方を見直すことができます。
潜在意識と行動変容の鍵
私たちの行動や習慣の大部分は、無意識である「潜在意識」によってコントロールされています。顕在意識はわずか3〜7%に過ぎず、残りの9割以上が潜在意識です。潜在意識にはいくつかの特徴があります。まず「主語を認識しない」ため、他人に対して放った悪い言葉も自分に返ってくるような影響を及ぼします。次に「否定形を理解しない」ため、「〜しないように」と考えると、むしろその状態を強化してしまいます。また「時間の概念を持たない」ため、「〜したい」と言い続けると、いつまでも「したい」という状態が続きます。このような特徴を踏まえ、「〜である」「〜になった」という肯定的かつ完了形の言葉で自己対話を行うことで、潜在意識により良い影響を与えることができます。
思考のメカニズムとABC理論
私たちの感情や行動は、「出来事(A)」に対して「信念(B)」が介在し、それによって「結果(C)」が生まれるというABC理論で説明されます。つまり、出来事そのものではなく、それに対する自分の解釈や思い込みが感情を作り出しているのです。たとえば同じ出来事でも、ポジティブに捉えるかネガティブに捉えるかで、まったく違った感情や行動が引き出されます。講義では、文章の句読点の位置を変えることでまったく印象の違う手紙になる例を用いて、思考の柔軟性と主観性を説明しました。日々の行動を変えることで「筋肉記憶(反応の癖)」も変化し、不安や怒りといった感情にもより健全に対応できるようになります。解釈を手放し、「今ここ」に意識を向けることが、心の自由を取り戻す第一歩なのです。
顔晴りましょう!
頑張るという字は昔は違う字を書いていたという説があります。ニコニコする、顔を晴らすというのが頑張るの語源だと言われています。頑張るという字を書かれると萎縮したり、力みすぎたりします。焦って何かをすると良いアイデアも生まれてきません。だから、常に今のことだけに集中して顔晴りましょう。たくさんのご縁が広がりますことを心よりお祈りしながら講演を終了とさせていただきます。
Archive

研修開催日:2017年11月5日
Vol.03