DPC RECRUIT
フォローアップ研修
Vol.06〜第六回DPC研修〜
コロナ渦に求められる接客
Vol.06 研修開催日:2023年6月11日
ホスピタリティーマインドトレーナー
元東京ベイコート倶楽部ホテル&スパリゾートコンシェルジュ
菊地 麻衣子(きくち まいこ)
2007年に日本航空インターナショナル株式会社に入社。国内線・国際線を乗務すると共にPR担当CAとしてオリンピック招致特別塗装機の会見などを担当。その後2010年にリゾートトラスト株式会社に入社し、箱根離宮にてフロントを担当する。現場スタッフながら誘客数、単価アップ金額ともにNo,1を獲得。その後実績が認められリゾートトラスト全国39施設内で最もハイグレードである東京ベイコート倶楽部ホテル&スパリゾートのコンシェルジュに抜擢される。CSリーダーとしてコンシェルジュスタッフ全体のCS工場を達成。2015年に独立し、現在は現場での経験を活かし、接客、ホスピタリティ、モチベーションアップ、メンタルヘルスなどをテーマにした講演や研修を行っている。
一瞬の接点 だからこそ 身だしなみ・言葉選び・所作が大切
講演はこんなクイズからスタートしました。
「フライトを90分とすると、客室乗務員(以下CA)は次の3つのうち、何に1番時間をかけているでしょうか?」
A:サービスの準備 B:サービス(接客など) C:安全業務
会場の皆さんにそれぞれ手を上げてもらうと、Aは数人、Bは1人、Cが大多数。
答えはC安全業務でした。安全に配慮しながら良いサービスを提供しなくてはならない点は薬局で働く私たちにも共通することです。
さらに、こう続けます。
「サービスの時間を20分とすると、そのなかで何名のお客様にサービスを提供するでしょうか?」
会場の1人に意見をもとめたところ「15人くらい」と回答。
しかし答えはなんと50名、会場からは驚きの声が上がります。
計算すると1人あたり15~30秒しかありません。
このように一瞬の接点だからこそ、身だしなみや言葉遣い、言葉選び、所作、表情がいかに大切なのか飛行機に乗ったことがある方はお分かりになるだろう。
続いて「飛行機とホテルの違いは何でしょうか?」
飛行機は公共の交通機関であり、時間と場所さえ合えば選ばれる存在。一方でホテルは多くの選択肢がある中で、選んでもらわなくてはならない存在です。働いている従業員、また、その顧客サービスが利用動機になります。
当然薬局は後者にあたります。限られた時間のなかで選ばれる接客をするにはどうすればよいのでしょうか。
これからのサービスはコンシェルジュ化!?
コンシェルジュという言葉を理解するにあたって、1つエピソードを話してくださいました。
「ディズニーランドに来てるんだけど、子供が高熱を出してしまった。ホテルの近くで休日診療をしている病院を探してほしい。」
宿泊客の山田様(仮名)から急な連絡です。
近くのクリニックに受診予約をとり、再度お客様へ電話をかけます。
「ホテルから5分ほどのクリニックで見てもらえることになりましたので、どうぞホテルにお戻りください。」
お客様からの要望にはお答えできていますから、ここまでで対応は終わってもいいところです。
しかし、山田様には他に2人の娘さんがいました。
「他のお2人のお嬢様は病院で待っていても退屈でしょうから、見て回れる近隣の施設やホテル内のプールなどをご案内いたしましょうか?」
と提案いたします。
この提案を受けて、山田様の声色が今までとは明らかに変わったことがわったそうです。
「下の2人に思い出を作ってあげられないのが気がかりだったのでとてもうれしい。」
と喜んでいただけました。
さて、薬局にも患者様から様々な問い合わせがあります。正確に素早く情報を伝えるだけであれば、機械の方が優秀。そんな時代が到来しつつあります。
接客の真価は、マニュアル外のサービスにこそ存在するのです。
信頼関係を築くうえで大切な3つのこと
➀時間
とある2つの銀行に行った時のことです。
1つの目の銀行では、番号札を取り特に案内のないまま番が来るまで30分ほど待ち、用事を済ませました。
その後2つ目の銀行では、番号札をとって数分後にはスタッフから
「本日あと5分程お待たせしてしまいますが、この後のご予定は大丈夫ですか?」
と声をかけられます。
皆さんはどちらの銀行を利用したいと思いますか?
当然2つ目だと思います。1つ目の銀行も待ち時間を少なくするように必死で仕事をしていたのかもしれません。しかし、たとえ5分だったとしても、この後の予定のことを気にしてくれていることに好印象を受けると思います。
時間を大切に扱うこと=その人自身を大切にすることなのです。
➁空間
人間関係を築くうえで大切な距離があります。約1.2メートルのパーソナルスペースという距離です。
特に日本人はこのスペースを守ろうという意識が強いです。
急にこの距離を踏み越えて声をかけても、接客を受ける準備がでてきおらず、場合によっては不快感を持たれてしまいます。
そこで、1度そのスペースの外から視界に入り声をかけてから接客をすることで、安心感や居心地の良い空間を作ることができます。
➂情報
お客様の情報、取り扱う商品の情報、今の情報(ニュース)。情報といっても様々です。
お客様の情報といっても、年齢や住所、家族構成などのプロフィールではなく、“孫が今年入園式”だとか“ワインが好き”だとか、「そうなんですね。」と流してしまう情報にこそ価値があります。人対人だからこぼすような情報を大切に扱うことが大事なのです。
続いて、商品の情報ですが、スマートフォンが普及している現代において、調べてわかる情報にどれだけの意味があるのでしょうか?
例えば、「スカイツリーに関する情報を教えてほしい。」と聞いたときに、「高さが○○mで入園料が○○円、人気のお土産として○○や□□があるようです。」と返答されたら、もうその人に2度と質問しないでしょう。それは調べればわかることだからです。
どの駅にはスロープがあって通りやすいか、大型のロッカーがあるから荷物を預けやすい、この時間帯は就学旅行生が多いから混雑する、など実際にキャリーケースを引いて行ってみることで、訪れる人に有益な情報をお伝えできる。
それこそが、人だからこそできる情報の取り扱いなのではないでしょうか。
お客様が感動するサービスとは?
菊地先生の肩書にもあります“ホスピタリティ”。
この言葉を理解するために、1つディスカッションのテーマが与えられます。
「○○駅周辺でどこか良い寿司屋知らない?」という質問にどのように返答するでしょうか?
5分ほどのディスカッションが終了し、会場の1グループに答えてもらいます。すると「どんな方と行くのか・年齢などを聞いて、それからおすすめする場所を考え提案する」という回答でした。
さて、自分の知っているお店を紹介すればよいだけなのに、なぜ相手の情報を確認する必要があるのでしょうか。
それは、相手にどうしたら喜んでいただけるかを考えているからです。それこそがホスピタリティなのです。
ヒアリングをしないままでは、いくら提案をしても的外れになってしまうこともあります。
仕事に慣れるほど、こういう時はこうするという、状況に応じた対応がわかる(決まる)ものです。そしてだんだん作業のようになってしまうということもあるでしょう。
では、お客様が感動するサービスとはいったいなにか?
その答えは、ホスピタリティを伴った想像を超えるサービス。機械にはできない思いやるというサービスなのではないか。
お客様が口に出す言葉は、情報の一部であることが多いです。だからこそ、しっかりヒアリングして、考えていることや要望をくみ取ったうえでサービスを行うことが大事なのです。
モチベーションを上げた3つの教え
➀お金の流れを改めて教えてもらったこと
菊地先生は当初、フロントスタッフ・レストランスタッフなど営業担当以外の職種も売り上げ向上を意識するという全社員営業に対して抵抗があったそうです。
良い接客をしたいだけで、営業がしたいわけではないと。しかし、ある先輩の一言でこの意識が大きく変わります。
「あなたが行う良い接客というのは、他の人が必死に営業していることでなりたっている。」
お客様が少なくなったホテルでは人件費が最初に削られてしまう。そうして人材が少なくなると業務で手一杯になってしまう。つまり、自分たちが接客する時間は自分たちでつくっていく必要があるのだ。
➁商品の価値をいろいろな機会に感じさせてもらったこと
自分の取り扱っている商品に自信がもてると、お客様にも提案しやすいです。成績優秀者への試食会、同窓会の時のサプライズ、家族と利用したときの温かいおもてなしなど、自分が取り扱っているサービスの良い所を実感できたことで、よりよいサービスの提供につながったそうです。自分の仕事に自信が持てなくなった時には自分から好きになる努力をしてはいかがでしょうか。
モチベーションを持てるように努力するとき、自分のついた仕事について努めて好きになることが一番いい方法
日本航空名誉会長 稲盛和夫氏
➂自分で考える面白さを教えてもらったこと
「新婚旅行で送るお客様に、予算はないけど何かしてやってほしい。」
この難題に対して、菊地先生はレストランで使用した不要になったバラを使って、飾りつけを行い、庭の木の枝でウェルカムボードを作ったそうです。その評判がよく、非常に喜んでいただけたそうです。
本当は予算もあったし、慣れた人がやった方が早いのに考えさせてくれたことで、任される喜びを知ることができた。
マニュアル通りにすることは安心だし簡単。しかし、マニュアルを1歩踏み越えてホスピタリティのある行動をすること。そしてやってみたことに対して良くても悪くても反応することが大事です。周囲の人からの反応がなければ、プラスアルファのことを続けるのは難しいのです。
最後に・・・明日からできること
顔を上げて周囲に興味を持ってください
自分の仕事を終わらせること、スマートフォンの中の世界だけに興味がいっていませんか?
思い切って声をかけること
あなたの声掛けで助けられる人、幸せになる人がいることに自信を持ってください
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研修開催日:2017年11月5日
Vol.03