DPC RECRUIT
フォローアップ研修
Vol.04〜第四回DPC研修〜
地域と共に歩む薬局創り
Vol.04 研修開催日:2018年6月17日
伝え方コンサルタント
株式会社医療経営研究所 取締役
佐藤 健太(さとう けんた)
“伝え方コンサルタント”として、経営コンサルティングに加えて、心理学をベースにした「人間力」を高めるための研修や 講演、セミナーを、全国各地の病院、薬局、介護施設等で年間 80 件以上実施している。「 一人ひとりが変われば、チームも 変わる」をモットーに、参加者の心を震わす時間を創ることに日々取り組んでいる。様々なエピソードやワークを盛り込んだ 内容は、面白くかつ実践的だと評判で、参加者からは「こういう研修は初めてです!」「人生観が変わりました!」との喜びの声を数多く頂いている。また、そのノウハウをコンサルティングの現場でも活用し、集患やチームビルディングなど、具体的な改善に繋げている。
Program
地域に愛され、選ばれる薬局・薬剤師へ向けてー (講義形式)
DPCの薬局が生み出せる付加価値について (グループディスカッション形式)
Movie
第4回目のDPC スペシャル社員研修企画を終えて
「地域と共に歩む薬局創り」をテーマに、今回、伝え方コンサルタント・株式会社 医療経営研究所・取締役の佐藤健太先生を講師に迎え、研修会を行いました。
私たちを取り巻く環境は日々変化しており、人口の推移ひとつとっても、そこには、年々移りゆく大きな変動の波が認められます。そんな中で、医療需要の総量や薬局に求められる役割等に、今後、どのような変化が生じてくるのか。人口推移という客観的なデータを通して未来へ関心を向けること。今回、その重要性に改めて気付かされました。
これからの日本の人口推移では高齢者が増えていきますが、厚生労働省の患者調査のデータを見て分かるように、処方箋の枚数・患者様の数が増えていくわけでは決してありません。加えて、調剤報酬改定や薬価改定があるたびに、薬局が被る不利益は増えていく印象です。昔のように薬局をクリニックや病院の前に建てるだけで収支がプラスになるわけではないのです。それでは、これからの薬局事業で生き残っていくためには、一体何が必要で、どのように他の薬局と差別化していけば良いのでしょうか。
そのプラスアルファの強み(機能・サービス)も、薬局が立地する地域の求めに応じて、様々に変わってきます。人口・年齢構成、近隣の学校・企業・お店、薬局を利用している患者様の年齢層や家族構成・来店頻度、周辺にある競合の強みなど、様々な ファクターに気を配り、その地域ならではのニーズを具に把握していくこと。そうすることで、はじめて、特別感のある心温まるサービスを患者様に提供していくことができるのです。
患者様の自己重要感(自分が大切に扱われているという満足感)を満たすこと。サービスの5段階で言えば、第1段階の「義務サービス」、第2段階の「当然サービス」を行うことは前提として、第3段階の「期待サービス」、第4段階の「感動サービス」までを、しっかりと患者様に提供すること。そうすれば、自ずと、地域の数ある薬局の中から選ばれる存在になれるはずです。
892 ある職業の中から「薬剤師」を選んで、日々仕事をしている私たち。そんな私たちの人生の大半を占めるのが、「仕事」に費やす時間です。薬局での「仕事の質」は、 すなわち「人生の質」。自分という存在を輝かせるためにも、自らの仕事を通じて周りの人たちを喜ばせていくこと。薬の専門家としてだけではなく、良き健康支援者となること。そして、患者様一人ひとりとの繋がりを大切にしながら、記憶に残る薬剤 師へと成長していくこと。この研修を通じて、薬剤師としてだけでなく、ひとりの人として、生き方の良い目標を頂きました。
佐藤健太先生の講演 「私たちを取り巻く環境の変化――私たち自身の変化」
1.大事なのは、人は賢いということ、そして、人を信じること
私たちを取り巻く環境の変化は著しく、時代に合わせた変化が、現在、強く求められている。「変化」とは、時間という連続性の中で絶え間なく起こる、状態・状況の移り変わりのことである。その「変化」の波を捉え、自身を時代とチューニングしていくためには、一体何が必要なのか。佐藤先生は、「まずは、視野を広げることです」と語る。
ともすれば、私たちは日々の忙しさの中で、目の前のことに捕われがちになる。その際の視野の幅は、どうしたって狭くなる。そんな時にこそ、私たちは、様々な課題解決ツールに溢れる「現代」という時代に生きていることを思い出すべきだろう。
そのツールのひとつは、データである。例えば、「日本の高齢化率が、現在、上昇の一途を辿っている」と いう言説について。そのことを聞いた限りでは、処方箋枚数は今後増加していくのでは、と思えてしまう。 しかし、実際に人口推移のグラフを用意して、業界に関連する客観的データ(例えば、健康寿命の延伸の 事実を示すデータなど)と照合することによって、「高齢者の増加」が、単純に「処方箋枚数の増加」には繋がらない、などと予測できるようになるのである。
さらに、ICT・AI・ロボといったテクノロジーも、私たちにとって非常に有用なツールになりうる。しかし、それらの急激な開発と普及は、私たち薬剤師の仕事を将来的に脅かしていくのではないだろうか。そういった不安を抱くことも、一方で、もっともなことだ。そんな時、アップル社の共同設立者として知られるスティーブ・ジョブズの言葉は、私たちの心に力強く響く。
̶̶テクノロジーは重要ではない。大事なのは、人は賢いということ、そして人を信じること。 人にツールを与えれば、それを使って素晴らしいことをするだろう。
上の「テクノロジーは重要ではない」という言葉は、「人はテクノロジーに全てを支配されるものではない。テクノロジーは、どこまでいってもツールにすぎないのだから」と捉えると良いのではないかと思う。私たちの生きるこの世界には「人でしか成立しないもの」が必ず残されている。そして、それこそが素晴らしいものなのだ。ジョブズの言葉からは、そのようなメッセージが読み取れはしないだろうか。
2.「立地」から「機能」へ、地域に求められる薬局であるために
医療を取り巻く環境は、時とともに変化し続けている。人口は「若者中心、増加傾向」から「高齢者中心、減少傾向」へ。医療の目的は「治す医療」から「支える医療」へ。目標は「治療・救命」から「機能改善・生活支援」へ。
このような時代の流れの中、薬局が選ばれる基準にも変化が見られ始めている。今までであれば、病院から近いという「立地」を理由に選ばれることがほとんどであった。しかし、これからは、「立地プラスアルファの機能」で選ばれる時代が来ると、佐藤先生は指摘する。
それでは、ここで言う「プラスアルファの機能」とは、何だろうか。以下に、佐藤先生が挙げた 3点を並べてみる。
1つ目は、「地域に根差す」こと。
2つ目は、「違いを感じさせる」こと。
そして、3つ目は、「全員が主人公である」こと。
まず、1つ目を考えてみよう。
「地域に根差す」と言うは易いが、私たちは、自分の薬局が存在する地域のことについて、実際にどれだけ知っているだろうか。薬局の周辺の様子、利用される患者様の特徴、近隣に立地する競合、医療・介護資源など、知っておくべき情報は山ほどある。人口といっても年齢区分別で分けたらどうなるのか、 居住期間別や世代別単身世帯数で見たらどうなるのか。着眼点を変えることにより、様々な知見を得ることができるだろう。
2つ目、「違いを感じさせる」ことについて。
ここでいう「違い」とは、サービス及び、サービスを提供するスタッフそのものが持つ特別性(個性、差別性)のことである。それでは、薬局が実現すべき「違い」とは一体何なのだろうか。その答えを求めて、ディズニーリゾートやリッツカールトンのような一流のサービスの根幹を見つめてみると、ひとつのキーワードに行き当たる。
̶̶それは、「自己重要感」。
自分は大切な存在なのだということを確認したいという欲求のことである。一流サービスは、すべからく、お客様のこの自己重要感を満たしている。この自己重要感という欲求は、実に人間らしい感情の現れだ。私たち人間は、何かのサービスを受けた際、「サービス内容そのもの」よりも、「誰がそのサービ スを行ってくれたのか」を重視する傾向にある。好感を持てる「この人」がしてくれたことだからこそ、嬉しいのだ。つまりは、サービスを行う者の“人間的な魅力”が重要だということである。
「この地域にはたくさん薬局があるけれど、ここのスタッフの人が一番いいのよね」
シンプルに言えば、そういう存在を目指していくということ。患者様の人生(ペイシェント・ジャーニ ー「Patient Journey」)の中で、継続的に優しく寄り添い続けていこうという姿勢を持つこと。それこそが、大切なことなのだ。
3. 仕事とは、人をしあわせにすること
そして、最後に3つ目。「全員が主人公である」こと。
日本には 892 の職業があるとされている。私たち薬剤師は、自分の人生の大きな選択として、数ある仕事のうち、その892分の1を選び取った。だから、自分の人生を充実したものにするためにも、薬剤師の仕事を“ライフワーク”にしていけると良いのではないだろうか。
「生きるために食べよ、食べるために生きるな」
これは、古代ギリシアの哲人・ソクラテスの言葉である。ライスワーク(生活のために仕方なく働いている状態)から、ライクワーク(自分が好きだから働いている状態)へ。そして、さらに、ライフワーク(自分が好きでやっている仕事が、自分以外の誰かを幸せにしている状態)へとー。
最後に佐藤先生が公演の終わりに紹介してくださったエピソードをもって、このレポートの締め括りとしたい(矢島実『「涙」と「感動」が幸運を呼ぶ』参照)。
4.「命のサイン帳」
ディズニーランドのインフォメーションに、ひとりのお父さんがやってきました。彼は気落ちしたふうに、「実は、息子のサイン帳を紛失してしまいまして…。キャラクターを見つけてはサインをもらい、あと少しでサイン帳が埋まるところだったのですが」と言いました。しかし、残念ながら、インフォメーションには、そのサイン帳は届けられていませんでした。
お父さんの話を聞いたスタッフは、すぐにパーク内を探す手配をしましたが、すぐには見つかりませんでした。そこで、そのスタッフはお父さんに滞在日を聞いた上で、「帰らなければならない2日後のお昼まで 探してみるので、帰りにもう一度こちらにお寄りください」と伝えました。そのスタッフは、その後も心当たりのある場所を探し回りました。ところが、とうとう見つけることはできませんでした。
そして、そのスタッフは、結局、そのサイン帳と同じものを自分で購入して、自分の足でキャラクターのもとへサインを書いてもらいに行き、そうして、当日を迎えました。お父さんが来ると、そのスタッフは、「申し訳ございませんでした。なくしたサイン帳は見つけることができませんでした。でも、お客様、こちらのサイン帳をお持ち帰り下さい」と笑顔で言って、キャラクターのサインが全部書いてある新しいサイン帳を手渡しました。お父さんの感激は、想像に難くありません。
そして後日、ディズニーランドに、お父さんからの一通の手紙が届きました。そこには、サイン帳のお礼とともに、ディズニーランドに遊びに行った時、息子は脳腫瘍でいつ死んでしまうかわからない状態であったこと、息子はディズニーランドに行くことを心から望んでいたこと、なくしてしまったと思っていた大切なサイン帳が戻ってきて息子が大喜びしていたこと、などが書き記されていました。
̶̶「パパ、ディズニーランド、楽しかったね!ありがとう!また、行こうね」と言いながら、ディズニ ーの思い出がいっぱい詰まったサイン帳を胸に抱いたまま、息子は安らかに息を引き取っていきました。
そして、お父さんの筆はこう続けられていました。「もし、あなたがあの時、あのサイン帳を用意してくださらなかったら、息子はこんなにも安らかな眠りにはつけなかったと思います。あなたのおかげです。本当にありがとうございました」
その手紙を読んだスタッフは、その場で泣き崩れました。それは、男の子が亡くなったという悲しみとともに、「あの時、精一杯のことをしておいて、本当に良かった」という安堵からきた涙だったのかもしれません。
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研修開催日:2017年11月5日
Vol.03